Amazon Braketとは
この記事ではAWSが提供する量子コンピューティングサービスである、Amazon Braketの概要について、個人的に感じるメリットも記載しながら説明します。
Amazon Braket学習コース
AWSでの量子コンピューティングサービスであるAmazon braketについての学習コースを作成しました。
量子コンピュータやAWSの知識が無い方でも学び始められ、最終的には量子機械学習についても学べます。 こちらも利用し、量子技術のスキルを身につけましょう!
Amazon Braketの概要
Amazon BraketはAWSが提供する量子コンピューティングサービスで、以下の機能を提供します。
- Amazon Braket Notebookの利用
- Amazon Braketマネージドシミュレータの実行
- 複数のプロバイダーが提供する量子コンピュータの実行
- ハイブリッドジョブ機能
- アルゴリズムライブラリの利用
それぞれの項目についてより具体的な内容を記載します。
Amazon Braket Notebookの利用
Amazon Braketでは、Amazon Braket Notebookインスタンスを作成、起動し、利用することができます。
これにより簡単にJupyter Notebookベースの開発環境を用意することができ、量子プログラミングをすぐさま始められます。
特にこの環境ではQiskitやPennyLane、Amazon Braket SDKなどの量子コンピューティングSDKが起動直後からほ利用できる状態でインストールされているという点が便利です。
量子コンピューティングSDKの発展は著しく、バージョン差異による影響でコードを書いてもエラーが発生するケースがよく見受けられます。
Amazon Braket Notebookでは、起動後のインスタンスに既に用意されているチュートリアルに従えば、確実にエラー無く量子回路を実行することができます。
この扱いやすさは一つのメリットと言えるでしょう。
さらに、このAmazon Braket Notebookから、後ほど紹介するAmazon Braketマネージドシミュレータの実行や量子コンピュータが簡単に実行できるのも利点です。
また料金について、Amazon braket notebookの起動時間に依存して課金が発生する仕組みとなっているようで起動時間に注意が必要そうです。
Amazon Braketマネージドシミュレータの実行
先ほど紹介したAmazon Braket Notebookのローカルシミュレータを利用すれば量子回路は簡単に実行可能です。 しかしながら、量子回路における量子ビットを増やしていった時にローカルシミュレータでは実行しきれないケースも出てくるかと思います。 ここで、Amazon Braketマネージドシミュレータを用いることで、Amazon Braket Notebookや、ローカルのPCでは実行できないような規模の量子回路を実行可能となります。 利用可能なシミュレータとざっくりの説明は以下の通りです。
Simulator | Description |
---|---|
SV1 (State Vector Simulator) | ローカルシミュレータより多くの量子ビットでシミュレート可能 |
TN1 (Tensor Network Simulator) | SV1より大規模な量子ビットでシミュレート可能 |
DM1 (Density Matrix Simulator) | ノイズあり、つまりより本物の量子コンピュータに近い環境でシミュレート可能 |
料金については、どのシミュレータも実行時間に依存して料金が発生する仕組みとなっているようです。
複数のプロバイダーが提供する量子コンピュータの実行
AWSマネージドシミュレータと同様にAmazon Braket Notebook経由で、簡単に様々な種類の量子コンピュータが実行可能となります。 2025年5月現在、以下プロバイダーの量子コンピュータを利用できます。
- IonQ
- IQM
- QuEra
- Rigetti
AWSが近年開発を進めている量子コンピューティングチップであるOcelotもいずれは利用可能となるでしょう!
簡単にこれらプロバイダーの量子コンピュータを利用できるのは魅力的ですね。
料金はタスク数とショット数に依存するようです。
ハイブリッドジョブ機能
VQEや量子機械学習アルゴリズムであるVQCのような、量子古典ハイブリッドアルゴリズムでは、以下の図のように古典コンピュータと量子コンピュータの計算が交互に行われます。

ここで、量子コンピュータは複数のユーザーで共有して利用されているため、以下図のように他のユーザーのジョブが間に入り待ち時間が発生すると、合計の処理時間が大幅に増加してしまいます。

これを解決するのがハイブリッドジョブです。ハイブリッドジョブとして作成された量子古典アルゴリズムは、より優先的に量子コンピュータが利用可能となります。
また、古典コンピュータとAmazon Braketマネージドシミュレータのハイブリッドジョブも作成できるようです。
料金はハイブリッドジョブにより利用された、それぞれのリソース消費量の和となると記載があります。
量子アルゴリズムライブラリの利用
Amazon Braketでは最適化アルゴリズムやグローバーのアルゴリズムなど複数の量子アルゴリズムライブラリが用意されており、Amazon Braket Notebookから簡単に実行できます。 例えば、以下のアルゴリズムなどが利用可能です。
- Bernstein-Vazirani algorithm
- Deutsch-Jozsa algorithm
- Grover’s algorithm
- Quantum Approximate Optimization Algorithm
- Quantum Phase Estimation
- Shor’s Algorithm
- Quantum Circuit Born Machine
量子機械学習アルゴリズムの一種である、Quantum Circuit Born Machineも利用できるのは興味深いですね。これらライブラリを利用しながらコーディングを効率的に進めましょう!
その他Amazon Braket利用のメリット
他のAWSサービスとの連携が用意なこともAmazon Braketのメリットと言えるでしょう。例えば、他サービスでデータを加工してAmazon Braketで計算したり、計算結果をS3に簡単に保存することが可能です。
またより高度な連携としてAWS CloudTrailやIAMサービスなどを用いて、あるユーザの量子コンピュータの利用料金が閾値を超過した際に、それ以上量子コンピュータを利用できなくするような実装も提案されています。
Amazon Braket学習コース
AWSでの量子コンピューティングサービスであるAmazon braketについての学習コースを作成しました。
量子コンピュータやAWSの知識が無い方でも学び始められ、最終的には量子機械学習についても学べます。 こちらも利用し、量子技術のスキルを身につけましょう!